トリニティア3話

「結界が・・・作動してるはずがしていない?」

セラとダストから聞いた言葉は、この先の不穏を告げているようだった。

「確かに、結界コアはこの『増幅装置』の石碑に組み込まれてる。なのに何故か結界が作動していないのよ」

『増幅装置』とは、コアの固有能力を高める為に作られた専用装置。形もそれぞれある。
この石碑はその増幅装置の一つ。

石碑の真ん中に、白の輝きを小さく放つコアが埋め込まれている。
取り出すことは愚か、触れることすら叶わないように、増幅装置がコアの周りにシールドを展開している。
シールドが機能しているということは、コアも機能を失っていないということになる。

結界は、外からのポケモンを寄せ付けないように出来ている。
その為、村の入口は関所になっていて、手持ちのコアに入門許可証を登録してもらわなければ、何人たりとも通ることは出来ない。

「考えられる可能性は・・・コアと増幅装置のリンクに異常があるか、あのヒヒダルマ達が許可証を持っていたか」

「後者はありえないだろ!あいつらはコアを埋め込めるような道具を持ってなかった!」

「いえ?私達は『可能性があることを知っている』じゃない」

「可能性・・・」

限りなく低い可能性だが、道具がなくてもコアを持ち歩ける可能性を、俺達は知っていた。

「けど、そんなことする意味がわかんねぇよ」

「ま、確かにね。けどどうやら、帝都への出発の時間を早めた方が良いみたいね」

「え、なんで・・・」

「またこの村は襲われる可能性がある。寝てる間に襲われたんじゃ、出発に支障が出るでしょ?ここはヘヴィ親方らに任せて、さっさと出発しましょ」

「はぁ!?逆でしょ!?」

冷静な口ぶりのセラに、メープルが怒りの矛先を突き付ける。

「あたしらはそこまでしてギルドの名声を上げたい訳じゃない。名誉の為だけに帝都へ出向く位なら、この村を守るべきだと・・・」

「そんな生活続けるつもり?もしかしたらこの村、狙われてるかも知れないじゃない」

オセロの裏表を返すように、難無く言葉を返すセラ。そしてその言葉は、確かな確証もなく、俺達の心を突く。

「・・・仕組まれたことだって言いたいの?」

少しして、ラットが口を開く。

「sure。私達、小さなギルドのメンバーだけど、ここの村長も担ってるヘヴィ親方は、知ってる通り、時の人じゃない。そう考えても可笑しくないわ」

淡々と話を続けるセラ。どうでもいいが、セラは『その通りだ』と返事をする時、『sure』と言う口癖を発する。

「それに、帝都には結構疑問もあるしね」

「?」

俺達はそんな発言をするあんたが疑問なんだがな。

「あたしは今すぐ帝都へ行くわ。残りたい人は残って。これはあたしのわがままよ」

そう言うとセラは、村の出口へと歩き始めた。
俺はセラの行動と言動に多少の違和感を覚えたが、さっき見た謎の依頼書を思い出し、決心した。

「俺も行くぜ」

「ちょっ、アッシュ!?」

「ヘヴィのおっさんがいんなら、この村は結界がなくても安心だ。俺も色々気になることが出来たしな」

そう言うと、メープルとラットは言葉を詰まらせた。しかし。

「俺はま、セラとアッシュが行くんなら行こうかな」

ダストがさらっと結論を出した。

「何よそれ!じゃああたしも行く!」

「えっ、一人にしないでよ!僕も行く!」

「お前ら結論急ぎ過ぎだろ・・・」

んなわけで。
急いだ結論引っ提げ、ギルド『ブレイブ』、帝都へ出発。

「そうでなくちゃね」

セラは嬉しそうに、薄く笑みを浮かべた。

To Be Countinued.