PEL〜ポケモン調査隊連盟〜 第九話

響く雑音。

閉じたまぶたに見える残光。

やけに重いまぶたをこじ開ける。

さっきまでと同じ、緑の林が並ぶ景色だ。

「なに・・・?」

頭に浮かぶのは量産される疑問ばかり。何に対して疑問を抱いているのかわからずに、私はこの二文字を口走っていた。

「・・・・・。」

辺りは静穏に包まれる。

「ピリリリリ!!」

「うわぁっ!!?」

静けさに機械音がこだまする。
ポケフォンを手にするカナリア先輩を見ると、状況の整理が一瞬で完了した。

「おい、どうなった!?住民は無事なんだろうな!!?」

デカルディ副長のうるさい金切り声が鼓膜を揺らし、無感情を取り払い、不快感を与える。

「えぇっと・・・・・!」

状況の整理が出来ていないカナリア先輩と、今回の任務の使命感を合わせた結果、私はカナリア先輩のポケフォンを取り上げて、電話口に口元を寄せる。

「ユノ、カナリアの両名、とりあえず無事です。隕石が落ちたかはまだ確認が取れていません。残っていた住民の話によれば、住民はほぼ全員避難したようです。・・・ただ、二匹の住民の無事が定かではないですが。」

「・・・そうか。だが確定ではないな?なら任務を続行してくれ。住民の安否、森の状況、その他諸々、調査を終え次第、再び連絡してくれ。」

「了解。」

通信を終え、ポケフォンをカナリア先輩に返し、溜め息を一つ。
でも副長は本当に冷静だ。悔しいけど、やっぱり副長なだけある。
さっきの不快感は取っておいて、副長に愚痴を言うとき再び取り出そう。

「貴方達は念のため避難して。カナリア先輩はついて来て下さい。」

そう言い終え、思考回路を元に戻す。

「あ・・・・・いや、俺達も行くッス。カタナさんはともかく、ライルさんは性格にクセがあるんで、初対面だといらつくと思うッスから。」

住民のテッカニンは、そうやって丁寧に話をしてきた。
ただ、羽音がうるさい。五月蝿いと書いてうるさい。虫偏付けた難しい方の五月蝿い。

「へも〜!はんははふはんへひひふへほほ!はんはほひへほ〜!!」

「五月蝿いね、この蕾。」

ちょっと馴れ馴れしくそう言ってみた。
ヘモグロビンとか破防法とか、変換で面白い言葉が出てくるので、ツッコミたいのは当たり前だ。

「でしょう!?」

ものすごく気が合いそうな、憎たらしい笑顔をして、テッカニンが返してきた。

「貴方、名前は?」

「イダテン!椿、韋駄天って言うんス!あ、因みに椿と書いて<ツバキノ>、って読むんス。更に言うと、名字は椿の方ッスよ。呼び方はイダテンでいいッス。」

「じゃあ、ツバキノって呼ぶわ。」

「えぇ!?新しいッス!!」

「ははは、冗談、冗談!よろしく、イダテン。」

会話が弾む中、草ののもふもふがふもふも言ってたが、気にしない。

「ユノちゃんっ!まったりしてていいの!?」

カナリア先輩が慌てふためく姿が可愛い。
そして私はレズではない。

「大丈夫ですよ、多分。風圧で吹っ飛ばされたとしても、この辺りは森しかない。さっきまでで木の倒れる音はしなかったし、木が倒れるとしたらここら辺だって倒れるはず。木の下敷きにならない限り、気絶はあっても死ぬことはないでしょう。問題は、隕石を直で受けた場合、ですかね。」

「それの方が危ないよ!」

「いや、食らってたら即死ですし、急いでも意味ないかと。」

「・・・ユノちゃん、結構酷いよね・・・。」

分析に長けている、と言って欲しい。

「さて、調査再開しますか。」

一人気合いを入れ直して、隕石の落下地点へ向かう。

ちなみに、イダテンが担いでいた重い荷物は、迷わないように道の途中に植えた。

To Be Countinued.