PEL〜ポケモン調査隊連盟〜 第十話

「・・・景色、変わんないなぁ。」

目の保養でもしろと言うのか。それとも森林浴の初体験をここでしろと言うのか。
んなもん羽音がうるさくて出来ない。
というのは冗談。
イダテンはむしろ静かに飛んでいる。多分、自分の精神状態と比例して羽音がうるさくなるのだろう。今は至って静かに、ゆっくりと羽を揺らす。

「そろそろ、ライルさんの住家ッスね。」

・・・そのライルというのは何者なんだろう。せめて種族くらい知りたいのだが、生きてたら会えるし、聞くほど大したことでもないので、性格などの細かいことにも、突っ込むのは控えた。

「はぁぁぁぁっっ!!!?」

え、何。奇声?ライルって人?何、変人?
思わず目を細め、眉間にシワを寄せるのが自分でもわかった。

「あ、ライルさんの声!元気そうで何よりッスけど、今の奇声なんスかね。」

「知らないし。」

それ以外なんと返せと言いますか。

「とりあえず行ってみるッス。」

森のパレードをくぐり抜けると、目を疑う光景があった。

「なっ・・・・・!?」

開けた場所に、クレーターのような穴がぽっかりと空いている。
その中心、一番凹んだ部分に、三匹のポケモンがいた。
ピカチュウヘラクロス、そして・・・・・キルリア
キルリアは中心部分に座り込んだまま動かない。
私が目を疑ったのはそれだった。

さっきイダテンが<逃げ遅れた>と言ったのは、<ライル>と<カタナ>という二匹だけだった。<ライル>の声は、明らかに♂の声だったし、<カタナ>と言う名前なら、まず♂だろうと言うことを連想する。
あのキルリアはどう見ても♀だ。ならば彼女を<三匹目>として見るはず。その時点でおかしい。
けど、何故三匹もいるかより、もっと疑ったことがある。

何故あのキルリアはあんな場所に座り込んでいる?

そりゃあ馬鹿三人が戯れてるとすれば話は別だ。
けどあのキルリアは呆けた顔で状況が飲み込めていない様子。
そもそもそんなスペシャルバカがいるとは思えない。いや、ライルって奴がそうか?

「ライルさんっ!!」

イダテンの声で我に返る。

「おーう。イダテンか。なんだお前、逃げなかったのかよ。」

ピカチュウの方が返事をした。どうやらあのピカチュウが<ライル>らしい。

「ライルさん、勧告気付いてたならなんで逃げなかったんスか!!」

微妙に呆れ顔、けれど口調は怒っている様子。

「別に。俺はPELとか言う意味わかんねぇ組織の言いなりになるのが嫌だっただけさ。それに、誰が自分の家捨てて逃げるかよ。」

なんだかな。
嫌味を言っているようにも聞こえるし、単純に住家を残して逃げるのが許せなかったようにも聞こえる。
なるほど。確かに性格にクセがある。

単純と言えば、カナリア先輩は今の言葉に対して素直に怒るかと思ったけど、そうでもない。無表情で目をパチクリさせている。

「ところで、そっちのお二方は?」

ヘラクロスがこっちを見ながらイダテンに疑問を投げかける。
どうやら、<カタナ>はあのヘラクロスのようだ。

「あぁ、PELの方ですよ。」

「ほーう。」

ライルが半目でこちらを睨みつけてくる。
へぇ。そんな態度なら、こっちもへこへこはしない。

ポケモン調査隊連盟のメンバー、ユノよ。ちょぉっと話を聞かせてもらおうかしら。」

「話ねぇ・・・。別にいいけどよ。あんたは権力を振り回すような奴じゃねぇみたいだしな。」

「失礼ね。偏見よ偏見。PELには、そんな憎まれるような奴はいないわ。」

・・・どうやらこいつは、最近増えた権力者を憎んでいるらしい。

権力者は、今まで自由に暮らしていたポケモン達を、徐々に縛り付けていった。
例えば、数十年も前のことだが、ポケ・・・・・いわゆる<お金>が流通したこと等があげられる。
商売という物が主流になってきて、貧困に苦しめられるポケモンも出てきたらしい。

「で、話って−−」
「あのぅー・・・・・。」
「んあぁ、なんだよ今度は!もう何言っても驚かねぇぞ!!?」

黙り込みを決めていたキルリアが口を開くと、ライルが間髪入れずに突っ込んだ。

「ポポ・・・っ!ポポケモンってそのぅ・・・・・やっぱりずっと裸なんですか?」

んあ?何言ってんだコイツ。裸もなにも、お洒落好きくらいだぞ、アクセサリー付けるのは。どこのお嬢様?

とは思ったが、ものすごい顔を赤らめて、両足の間に両手を挟んで、なんというか、もじもじしている。

「そういやその人誰ッスか?」

「ん?」

問い掛けられた言葉に、若干ためらいを感じさせつつ、ライルが口を開いた。

「自称、元人間。」

・・・・・・・・。









はぁぁぁぁっっ!!!?

To Be Countinued.