トリニティア3話

橙色の日差しは、いつしか夕闇に染まっていた。
カルム・トーチを出てから、野宿を経て一日が経過していた。辺りの色はすっかり黒に染まり、少し遠くに無数の明かりが見えた。目を凝らすと、街が影絵のように形作られている。

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「着いたわね」

夜に染まる帝都、『エンパイア・ドミネート』。その関所に辿り着いた。
関所には、黒マントを着て正体を隠しているポケモンが一匹だけいた。

「こんにちは。結界無効認証をお願いするわ」

「・・・セラ様ですね。そちらの方々は?」

「同じギルドの仲間よ。同行させても良いわよね?」

「・・・かしこまりました」

どうやらセラは、前にここへ来たことがあるみたいだ。
ちなみにどうでもいいが、この世界は時間感覚の概念がないため、「こんにちは」や「こんばんは」は全く同じ意味を持つ挨拶だ。



結界無効認証を済ませ、帝都内部へ入る。暗闇の空には明かりの代わりに光を放つライトスフィアが浮かべられている。

「それじゃ、面会申請してくるから」

「・・・そんなん要るの?」

メープルが惚けたような顔をして尋ねる。

「というか、大抵面会はマンツーマンだから。大丈夫、レポートも作ってきたし、私一人で済ませてくるから」

「えぇ!?僕達が来た意味は!?」

淡々と言葉を並べるセラに、泣きそうな顔でラットが言う。

「その内頼み事するからー」

そう言い残して、セラは王宮のような場所へと消えていった。

「なんだか拍子抜けだな」

セラの単独行動は少なくないが、俺達への置いてきぼり感が半端なく、呆れに近い感情を抱く。

「さっきは意味深なこと言ってたのにね」

「そうだな・・・」

とは言いつつ、俺には他に用がある。Sランク依頼のあの言葉が気になり、持ってきていたポーチからくしゃくしゃの紙を取り出す。

「あっ、なにそれー。」

取り出した紙に気を取られ、メープルが後ろから抱き着くかのような密着度でくっついてくる。オイ待てもうちょい離れろ、どういうつもりだ、毛皮触れてる。

「・・・依頼だよ」

「あ?何だ、受けてたの?って何それ、『タスケテクダサイ』・・・?」

メープルの言葉につられて、ダストとラットがこちらを振り向く。

「ん?アッシュお前、また勝手に依頼受けてたのか?」

「勝手にって言うなよ。けどセラが勝手に行っちまった今じゃ、都合が良いだろ?」

「えぇ・・・?僕はじっとしてたいな・・・。」

乗り気じゃないラットを差し置いて、とりあえず依頼書をしまい、辺りを見渡す。

「けどよ、そんな一文の紙で何がわかるんだ?そんなんじゃ何すりゃいいかもわかんな・・・。」

「あの」

「は」

ダストの後ろ、闇夜から現れた声に耳を貸す。
カツカツと、静かに足音が鳴る。それは特有の蹄が鳴る音だった。
光の中からなのに、姿は見えない。だが目を凝らしてみると、確かにそこに揺らめく影があった。

漆黒を切り裂いて現れたのは、漆黒。
艶やかな肌は光を通さないかの如く、黒を黒で塗り替えていく。
透き通ってしまいそうな程闇を映す小さな体に、見惚れる。
しかしその瞳は黒を惑わせ、妖艶に紅く微睡む。
刹那。紅色と漆黒に意識を取られる。

そこにいたのは、体毛を黒く染めた、『夜季のミキジカ』だった。

(挿絵)

「依頼書・・・。私」

「えっ?」

ダストは俺と同じくミキジカに見惚れていたようで、慌てたような素振りを見せた。

「あ・・・何?もしかして、あんたが依頼者?」

「はい」



To Be Countinued.



結局新キャラ出るとこまで行ったので、また挿絵を使いたい所が来てしまいましたーorz