ポケダン小説 PEL〜ポケモン調査隊連盟〜第三話

時運びの森。
此処は非常に穏やかな場所で、襲ってくる野性のポケモンもいない。
更には階層も非常に少なく、不思議のダンジョンとは言えないような場所だ。

この時運びの森は、最下層の更に奥に道がある。
これは、世界でもごく少数のポケモンしか知らない機密事項だ。

まぁ、PELでは常識的な程知れ渡っているのだが。

この最下層の更に先、最奥部に、「時祀りの祠」と言うのがある。
その場所にセレビィがいるのだ。

「着いたな。」

そこまで長い道のりではなかったけれど、気が重い。
コウガ先輩の声色を伺うに、どうやら満場一致で頭を垂れるような気分らしい。さっきからロリータもそわそわと落ち着かないそぶりだ。
まぁそれもそうだ。

伝説のポケモンはカッコイイだ、強いだ、珍しいだなんだと世間は言う。

けど現実問題、一致してる条件は三つ目ぐらいだ。
というかそもそも、弱点属性六つの奴とか、出オチの完全下位互換とか、強いと言えるのだろうか?
前者はまだいいが、後者はどう足掻いた所で、親を使えよと言わざるを得ない始末。伝説扱いされるだけマシと言うべきか、もうやめたげてと言うべきか。

強い奴は強い奴で、スカーフ巻かせてクジラの真似事してるだけで、チートだチートだと言われたり、
多人数で挑んでも、眠らされ何も出来ず悪夢にうなされる鬼畜プレイをされたり、
挙げ句の果ては、全属性攻撃を持ち、有り得ない硬さも誇る全能の神様と来た。

一体何がしたいんだ、伝説と言う肩書きを用いて。

とにかくそんな常識なんぞ知ったことか。
伝説のポケモンがどうした。
それぐらいあのセレビィはウザいのだ。

「・・・どうする。」

数分間の沈黙を破り、諦めかけた声色で、コウガ先輩が切り口を開く。

「今回は闇ギルドの件もあります。任務放棄はいかがな物かと。」
既に私は諦めていた。というか、デカール副長の小言もめんどくさいと思ったし。
「ソウッスネ。」
何を他人事みたいに。
明らかに口調がおかしいロリータに視線を向けない様にして、心の中でツッコんだ。

「じゃ、呼ぶか・・・。セレビィ!!」

目の前で緑色の光が瞬く。最初は綺麗だと思っていたが、最近はなんか色が汚れてきた気がする。
なんていうか、「碧」って言うのが「緑」ってなったみたいに。

パチュンッ!

という音と共に、玉ねぎの妖精が羽ばたく。
なんか最近ハエに見えてきてキモい。

「コラコラぁ〜〜〜〜っ!!!!コウガちゃん、そこは「ハニー」って呼ばないと、ダ・メ・ダ・ゾ☆」

嫌なおばさんかあんたは。

ダイアリーだとハートマークが出せないのは本当に有り難い。
ハートマークが常に語尾に付く会話パターンは御免だ。
でもだからって何故星マークなんだ。
ただキモさと引き替えにウザさが目立ってるだけじゃないか。
頼むからやめてくれ。おとなしくハートマーク打ち込んで、〓のマークを連続させて、意味のわからない文章にしてくれ。

「あっるぇ〜〜〜??ユノちゃん、久しぶりandそのしかめっつら解いてよこんの堅物さん♪♪」
「私の平和を乱さないで」
「アハッ♪それバトルサブウェイのトレーナーのせりふぅ〜〜〜っ!!もうんっわざとっ??ちゅめたいなぁ、ユノち〜〜〜ん!!」

ゴーグルじゃなくて、耳栓をすべきだった。

出発前、妙にやる気だったけど、一気に萎えた。そもそも何故やる気だったかと言うと、

給・料・日だったから。

今思えば、儚いやる気だったなぁ・・・。

「早速ですが、ここら辺で異常とかないですか?いつもの通り、穏やかそのものですけど。」
早速本題に入って、話を早く切り上げたかったのは言うまでもない。

「いいえ?でも、闇ギルドの連中が、この、「時祀りの祠」の場所を見つけてしまったの。」
「!?それってやばいんじゃないですか!?」
さらっと重要なこと言うな腐れ玉ねぎ・・・と思ったのは墓場まで持って行くことにした。
「ヤバヤバよぉ〜〜っ!まぁ、そいつはアタシが殺ったけど♪♪」

・・・・・・・・沈静。
場の空気が沈む。この人は何をやらかすかわからないので、いちいち冗談と本気の間に線を引くのが面倒だ。

「笑えない冗談やめて下さい。」
冗談かどうか、探りながら続けた。
「アハッ♪♪ごめぇん!!ただ、本当にやばいわ。今回は何もしてなかったけれど、きっと何か企んでる。」

口を覆い隠し、笑みを止め、凛とした瞳でこちらを見てくる。
この仕草のこの人は、ふざけた雰囲気を切り払い、威圧感にも似た緊張感を、私達にほとばしらせる。この一瞬で空気を変えるのは、やはり伝説のポケモンの貫禄だろうか。

「そのポケモンの種族や、特徴は?」
「黒マントに身を包んでいたから、種族はわからなかったけど、身長は割と低かったわね。少なくとも、ユノちゃんよりは。」
「私より・・・?」
段々と、謎の深みにはまっていく気がする。
頭の中の機能を駆け巡らして、この問題に対し、集中して思考をフル回転する。

・・・だけどやっぱり手がかりが少な過ぎる。
折角仕事って感じがして集中出来たのに・・・。

「ま、わかんないもんはわかんないんだけどっ♪♪あっ、お茶でも飲んでく??お菓子あるわよぉん♪♪♪」

黙れカス。

とまでは思っちゃいないが、頼むから黙ってて下さい。黙ってれば褒めたげるから。国民栄養賞あげるから。

「帰りましょう。」
そうだ切り上げていいんだと思い当たり、さっさと捨て台詞残して去ろうといきり立つ。
「「了解!!!!」」
「嫌がらせよ!!!?」
いつもよりハキハキと「了解」と言えた所で、早速帰ろう、颯爽と帰ろう。
玉ねぎの妖精がなんか言ってる?気のせい気のせい。

「任務完遂!!!」
「ああんもうっ、ユノちゃんのイケズゥ!!」

ユノはあなぬけのたまを使った!
おまけに爆裂のタネを落とした!!

「え」

ドシュゥウアァァ!!!!

「ユノちゃんのあほぉぉぉっっ!!!!」

私は間違ってないと思う−−

To Be Countinued.